韓国の国会議事堂

被選挙権も18歳から

韓国総選挙の分析に入る前に、韓国と日本の選挙制度の重要な違いについて触れておきたいと思います。韓国は日本と違って一院制です。国会の解散はありません。定数は300で任期は4年です。ただし、国会の常任委員会で通過した法案を再審議する法制司法委員会というのがあります。二院制ではないのですが、1・5院制ともいうべきダブルチェックの体制があるのです。
韓国の選挙権は18歳からですが、日本と大きく違うのは被選挙権です。日本では衆議院は25歳以上、参議院は30歳以上ですが、韓国は選挙権も被選挙権も18歳以上です。

多党制国会めざす

投票についても大きく違います。日本は小選挙区比例代表並立制ですが、韓国は連動型比例代表制です。これは説明が大変難しいのですが、簡略化していうと次のようなものです。
比例代表では、各政党が獲得した得票率に応じて300議席から配分されます。たとえば比例代表で得票率10%ならば、30議席が配分されます。そこから選挙区での当選者数を差し引いていくのです。「共に民主党」や「国民の力」といった二大政党は選挙区で各100議席以上取りますから、比例の議席はゼロになります。一方、選挙区で当選者ゼロの少数政党は、比例代表で獲得した議席がそのまま配分されます。この制度が導入されたのは2020年の総選挙からです。この制度の目的は二大政党が支配する韓国の国会で、少数政党が進出できるようにして多党制の国会にしていくことです。

選挙公営制

日本と韓国の選挙制度で大きく違うのは、一つはジェンダーの問題です。これは後ほど説明します。もう一つは選挙公営制です。大韓民国憲法第116条は、「すべての選挙運動は各級選挙管理委員会の管理の下、法律が定める範囲内で均等な機会が保障されなければならず、選挙に関する経費は、法律が定める場合を除き、政党又は候補者に負担させることができない」と定めています。ただし、憲法上、選挙に関する経費は政党・個人が負担するのではなく国が負担すると定められていながら、法律ではこれが具体化していませんでした。これが具体化したのは民主労働党が院内に進出してからです。
選挙公営制と並んで政党には補助金が議員数に応じて配分されます。選挙のときには、各政党に選挙補助金が配られます。今回の総選挙では501億9744万ウォン、日本円で約55億円が各政党に選挙補助金として配分されています。
選挙区で当選すれば法定選挙費用は全額、国から補填されます。これは有権者数によって各選挙区で若干違いがあります。選挙区で落選しても15%以上の得票率を獲得していれば法定選挙費用は全額補填されます。これによって各個人の負担が軽減されます。
比例代表の場合は、3%以上の得票率すなわち1議席以上の比例当選者を獲得した比例政党には選挙補助金が配られます。今回、国からの補助金のおかげで比例代表選挙を戦うことができたのが、祖国革新党でした。(つづく)