兵庫県庁

7月7日夜、県幹部の一人だった元西播磨県民局長の死亡が確認された。斎藤元彦・兵庫県知事(自民・維新推薦)のパワハラなど「7つの疑惑」を告発したため停職3カ月の懲戒処分を受けていた。疑惑を調査する「百条委員会」が51年ぶりに設置された矢先だけに衝撃が走った。元県民局長は百条委員会で証言することになっていた。
維新の県議たちが、元局長のつるし上げを画策していたと言われている。元局長が業務で使っていたパソコンの「全データの公開要求」というものだ。斎藤知事の不正やパワハラ事実を確認するのではなく、元局長への人格攻撃と、関係者に報復人事を狙うものだ。元局長は百条委員会に「斎藤知事の疑惑に関係するもの以外は公開しないように」と強く申し入れていた。結局、百条委員会としては元局長の意向に沿った決定をしたが、その知らせが届く前に、元局長は亡くなった。
告発文書によれば斎藤知事は昨年11月、阪神・オリックス優勝パレードの費用を確保するために、兵庫県から県内の信用金庫に交付される補助金を増額し、その増額分を「寄付」という形でキックバックさせたという。
10日には兵庫県職員労働組合が、斎藤氏の責任を問い「辞職を含めた最大限の対応を要求する」と片山安孝・副知事に申し入れ書を提出した。「告発した職員を守れなかったことは痛恨の極み」「文書問題の発生以来、現場の業務遂行には大きな支障が生じている。県政が停滞し、もはや県民の信頼回復が望めない」と指摘。約4千人の組合員がいる県職労として、知事の責任を追及する考えを明らかにした。その片山副知事は12日、「元県民局長が死亡するなど、県政の混乱への引責」で辞表を提出した。
最後に、亡くなった元県民局長が今年2月、兵庫県のホームページで綴ったメッセージを紹介したい。「歪な人事は組織を蝕んでいきます。そして、一握りの者たちが自らの栄達と保身に明け暮れ、気がつけば、権力者の周囲には二流、三流のイエスマンが主流を占めている状況に。権力者は好き嫌いで人を評価します。既に一部の者だけが居心地よい組織になってしまっていたとしたら末期ガンと同じです」
県政の中で正義を貫こうとした人物を死に至らしめた維新の罪は重い。(柳川三郎)