9月19日、日本郵政本社(東京都千代田区)前で、「二度と過労死を繰り返すな」という悲痛な訴えが響き渡った。声をあげたのは「郵便局員過労死家族とその仲間たち(郵便局員過労死家族会)」。左に掲げた一覧表は、家族会が今年9月時点で把握している、25件の郵便局員の突然死・自死事件である。
過労死問題に取り組む団体はさまざまあるが、一企業だけで遺族会が結成された例は、日本郵政以外にはない。この異常な事態には、郵政民営化とそれに伴う職場環境の激変が深く関係している。
一覧表の最初にあげられたさいたま新都心郵便局で、局舎からの飛び降り自死事件が起きた2001年は、郵政民営化に向けて郵政事業庁が設置された年である。郵政事業庁が03年に郵政公社に公社化されると、郵便局にトヨタ生産方式と呼ばれる新たな労務管理が導入された。これはストップウオッチとビデオで労働者の作業をチェックして極限まで労働強化を強いるものだった。
そのモデル局となったのが埼玉県の越谷郵便局とさいたま新都心郵便局。04年から10年にかけて把握されている突然死・自死事件7件中6件が埼玉県下で発生しているのは偶然ではない。
さいたま新都心郵便局で10年12月に起きた自死事件では遺族が提訴し、その後、労災も認定された。21年には日本郵便本社人事部長が遺族に謝罪したが、その後も郵便局員の突然死・自死は続いている。郵政産業労働者ユニオンに寄せられている労働相談で最も多いのが、職場でのパワハラやいじめに関するものだという。国内最大規模の巨大企業の異常事態を見過ごすことはできない。