
今回の衆院選で自公連立与党は議席を215に大きく減らし、過半数の233に及ばなかった。裏金問題、統一教会問題など、さらに物価高や生活苦などで渦巻く自公政権への怒りが噴出した。
今回の投票率は53・85%で、前回3年前を2・08ポイント下回り、戦後3番目の低さ。通常、投票率が下がれば政権与党に有利になる。にもかかわらず自公は過半数割れに至った。そこに、今回の特徴が見られる。
政党別の比例票を見ると、自民が533万票減となったが、立憲はその受け皿となれず、国民、参政、保守に票が流れた。維新は295万票減だが、それも国民やれいわに流れたとみていい。つまり、立憲は野党内では相対的に多数の議席を獲得したが、野党第一党として求心力を発揮できる状態ではない。
比例の世代別の得票率は20代と30代はいずれも国民民主党が20%を超え最も高く、40代以上では自民党、立憲民主党の順に高かった。40代から70代以上の人にいたるまで得票率が高かったのは自民、次いで立憲。30代以下の票の動きは、若者の窮状や将来への不安の反映とみてとることができる。「手取りを増やす」「消費税減税」「ガソリン税減税」などの訴えがストレートに支持された。
注目を浴びる国民だが、その主張はよく見ると危険だ。玉木代表は「若者の手取りを増やす」と言いながら、「社会保障の保険料を下げるためには、高齢者医療、特に終末期医療にも踏み込んだ、尊厳死の法制化も含め」と発言。さらに「医療給付を抑え、若い人の社会保険料を抑えることが消費を活性化し、次の好循環と賃金上昇を生み出す」と述べた。まるで高齢者医療や社会保障が若者の貧困の原因であるかのような言い草だ。
「政権交代こそ政治改革」とは立憲・野田代表の言だが、今回はその可能性はない。ここで野党のまとまりのなさを嘆いていても仕方がない。政治の流動化が始まったことは確かだ。人びとの生活実感にしっかりと根差した運動こそ社会を変革する。(淀川一博)
