スウェーデンのV-Dem研究所の「民主主義リポート2024」によると、世界の民主主義は1985年のレベルに後退したという。後退が顕著なのは東欧、南・中央アジア。上昇したのはラテンアメリカ・カリブ海地域▼民主主義体制で暮らす人は世界人口の15%、10億人に過ぎない。世界が40年前に後退してしまったのか。さらにその40年前は第2次大戦終結の年。来年は「戦後80年」になる▼山本昭宏さん(神戸外大准教授)は、「戦後平和主義の骨格は(広島・長崎などの)戦争体験者に負ってきた。国家の名で繰り返される殺戮に世界が何もできない現実は、戦争体験に基づいて平和を語る土台を失った現実でもあり、2025年は大きなパラダイムの転換点」「原爆と原発はメディアでどう扱われ、日本人の核意識の形成にどのように関与したか」を問う(『変質する平和主義』)▼「世界は我々を見捨てた」というガザの叫びの先に、未来をたぐりよせることができるのか。(啓)