
えん罪は国家による人権侵害
無実の人が誤った捜査・裁判によって自由が奪われ、仕事や家庭を失い、築き上げてきた人生や生命までも奪われる。えん罪はあってはならず、えん罪被害者は速やかに救済されなければならない。
再審は刑事訴訟法で定められた、えん罪被害者を救う制度だが、現行の刑訴法が1948年に制定されて以降、変わっていない。関連規定は19条しかなく、裁判官の裁量に委ねられることが、審理の長期化の一因とされている。
えん罪は、国家による最大の人権侵害であり、その被害防止・救済は国の最重要課題。わが国では過去に多くの悲惨な、えん罪事件が存在している。例えば、袴田事件は1966年に事件発生、1980年死刑確定から再審を請求し、再審開始、無罪判決、確定まで58年かかった。大崎事件は、1979年事件発生、1981年に有罪確定から、再審を請求している。2025年2月、最高裁が再審を却下し、弁護団は5回目の再審請求をおこなっている。
狭山事件は、1963年に事件発生、1974年の無期懲役確定から、再審請求が行われてきた。いまだ、認められていない。
何が再審を阻んでいるのか
再審には、「再審請求審」と「再審公判」の2段階の手続きがある。刑事裁判で有罪が確定した人が再審を申し立てる(請求)と、裁判所は非公開で審理し、無罪とすべき理由があれば「再審開始」と判断する。開始が確定すれば、公開の法廷で公判がやり直される。
「無罪とすべき理由」を考える上で、第1は捜査機関がもつすべての証拠を開示することが必要。第2は、検察の再審開始決定に対する不服申立てを禁止すること。不服があれば、再審公判のなかで主張すればよい。第3には、再審手続を整備し、ルールをつくること。
今国会で再審法の改正を
「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟(再審法改正議連)」は超党派で構成されている(1月7日現在、363人)。2月26日に総会を開き、国会に再審法改正法案を提出し成立を目指す方針を確認した。
2月7日鈴木馨裕法務大臣は、再審法の見直しについて近日中に法制審議会に諮問することを明らかにした。
全国で、再審法改正の動きが高まっている。昨年9月の「袴田事件、再審無罪判決」以降、全国の地方議会で、「国に再審法改正を求める意見書」採択が進んでいる。
日本国民救援会の調べによると、同意見書を採択した地方議会は19道府県、249市、189町、46村、2区の505(2024年12月現在)となっている。道府県では北海道、岩手、宮城、群馬、栃木、山梨、長野、静岡、愛知、岐阜、三重、石川、福井、大阪、京都、滋賀、奈良、和歌山、岡山、佐賀が採択している。関西では兵庫のみが未採択だ。兵庫、全国で再審法改正意見書採択を広げたい。(庄)
