
トランプ米大統領と、新設されたイ―ロン・マスク率いる政府効率化省(GОGE)は、連邦政府機関所属の科学者や研究部門に、職員の大量解雇と研究費予算の大幅削減を開始した。今年2月27日、米海洋大気局(NОAA)の800人に解雇通告が届いた。メリーランド州の連邦地裁は、3月1日、NОAAはじめ18省庁の職員2万4千人の大量解雇の違法性を認め、差し止めを命じている。
NОAAは、気候変動対策を敵視する保守派の標的となっており、「NОAAを解体せよ」(ヘリテージ財団提言書)の煽動を続け、環境保護庁(FPA)の新長官は、「気候変動宗教の心臓部に短剣を突き刺す」と敵意をむき出しにした。米気象学会は「国の宝が危機に瀕している」と抗議声明を発表し、地球物理学会はじめ500の学術団体がNОAAの「弱体化」に反対の声明を出している。
医学研究分野では、世界最大の公的助成期間である米国立衛生研究所(NIH)が、4月上旬までに800件の資金援助を切られた。HIVエイズ、トランスジェンダーの人々の健康、新型コロナウイルス、気候変動に関する研究の7割超が削減された。3月末、全米科学・工学・医学アカデミーの有志は、「米国は科学における優位性を失いかねない」と危機感を表明した。
トランプは、「反ユダヤ主義」に対応しない大学への助成金の打ち切りも明言し、全米60校に対し「強制措置」をとると警告、全米のキャンパスに拡大した反戦運動の震源地になったコロンビア大学は、4億ドルの補助金を凍結された。トランプ政権は世界の科学をリードしてきたアメリカから、自らの間尺に合わない科学の首をひねり始めた。それは、全世界に大影響を与える。ふたたびキリスト教右派の魑魅魍魎の世界に引き戻そうというのか。
日本の学術会議をめぐる反動は、このアメリカ、トランプによる科学の破壊、科学を政治の僕(しもべ)にする動きと連動している。科学を敵視するトランプの策動は大きな抵抗にあっているが、歴史の歯車を逆回転させる動きを注視しなければならない(啓)
