イラン革命のイスラム主義権力による簒奪
 1979年のイラン革命は、革命的左翼が先頭にたった親米王政打倒の人民蜂起の勝利を、当時唯一非合法化されていなかったイスラム主義勢力が簒奪して独裁的権力を握るものとなった。その後の8年間のイラン―イラク戦争を経ながら、独裁に反対する大小の様々な民衆闘争を制圧してイランの宗教的独裁権力は存続してきたという。(90年代、イラン人たちが大挙して来日した頃に、直接イラン人たちから聞いた話と相違なかった)。

「女性・生命・自由」 ― 22年「マフサ・アミニ蜂起」から26年1月まで
 2022年9月、クルド人女性のマフサ・ジナ・アミニさんは、弁護士をめざし大学に入学しテヘランに来たところ、ヒジャブの着用方法が不適切だと風紀警察に逮捕され、暴行を受けて虐殺された。この事件がソーシャルメディアで拡散されると、イラン全土で「女性、命、自由」のスローガンの下、抗議行動が大規模な反政府デモに発展、女学生たちは「今一緒に闘わなければ、一人一人殺される」と壮絶な決意で決起した。取り締まり側を含めた抗議運動に伴う死者数は、イラン当局による2022年末の発表でも200人以上。イランの人権活動家通信によると、2022年時点で犠牲者数は約470人、拘束者数は約1万8000人に達するとした。ノーベル賞受賞者の女性人権活動家ナルゲス・モハンマディは投獄の身で抗議運動に連帯し、マフサ・アミニの命日である2023年9月16日には、刑務所内でヒジャブに火をつけた。
 2025年12月28日に政府に対する不満と経済危機が深まる中、政府支持者が多いバザールから始まった抗議行動は全国に拡大、急速にイスラム主義独裁体制の終焉を求める広範な運動へと発展した。イラン政府当局は2026年1月21日にデモ関連の死者数が3,117人に達したと公式に発表し、1月25日にはロンドンに拠点を置くペルシア語衛星テレビ放送局イラン・インターナショナルが、1月8日から9日に限っても治安部隊が3万6500人以上のイラン人を殺害したとしている。女性の遺体が見せしめのために切断され、負傷したデモ参加者を治療する医師は拘束された。
このような状況に乗じて行われたのがアメリカ帝国主義とイスラエルのイラン攻撃であった。

イランへの侵略戦争とそのイラン国内への影響
 トランプはベネズエラ攻撃と同様の成功を期して戦略なきイラン攻撃を実行、そしてイスラエルはこれを利用し、また、2024年のレバノンのヒズボラへのポケットベル攻撃とナスララ殺害の成功、シリアにおけるアサド政権の崩壊に続いて、中東における自らに敵対する大国の一掃を狙ってジェノサイドを続けている。
 米帝とイスラエルによるイラン攻撃で既に多くの子どもを含む2000人近い人が殺害され、イランの多くの生活インフラを破壊された。イランとイスラエルの原子力機関付近への攻撃の応酬で「核戦争」の危機が引き寄せられている。
 戦争によって革命防衛隊の指導部の地位が強化され、殺された父に代わりモジタバ・ハメネイが最高指導者に据えられた。政権は、正統性をめぐる国内危機を外国侵略者に対する防衛戦争へと転換することで、抑圧者から保護者へと立場を変えることに成功している。軍事面では、イスラム政権は甚大な損害を被り、防空システムはほぼ無力化されているが、政権は民間人の保護にこれまで投資してこなかったため、避難所も効果的な警報システムも存在しない一方で、政権要人用の地下壕や原子力・弾道ミサイル施設の建設には、多額の資金が投入されてきた。軍事的な弱点にもかかわらず、イランは報復し、損害を与える能力を保持している。

闘うイラン民衆の立場
 イランの政治勢力は、大きくは①現イスラム体制派、②前体制パフラヴィ王政派、③反体制派の三つに分けることができると思われる。このうち、トランプの戦争を支持しているのは②王政派である。親米の王政派は国内に政治基盤はないが、海外での資金力にものを言わせてソーシャルメディアやテレビチャンネルを使い、あたかも反体制派が王政派であるかのようなプロパガンダを行っている。

 20世紀最後の制度的革命(クーデタではない支配体制の転換)を実現したイランには革命的左翼フェダーイの様々な分派や、クルド系の左派政治勢力、ムジャヘディンハルク等、多数の反政府党派が存在し、主にヨーロッパに拠点を置いてネット上にもサイトを開設、Google等の翻訳機能を使えば、日本人でもその主張を読むことができる。
Iran: Political Organizations – فهرست حزبهای سیاسی ایران
しかし、イラン国内に組織を持つ党派は、クルド系の組織やモジャヘディン等が少数存在するに留まっている。国内の大規模な民衆運動はイラン革命以来の闘いを継承しつつも、労働組合等の大衆組織以外の政治組織が根絶された困難の中で闘われている。
 全ての反政府勢力がアメリカ帝国主義とイスラエルの侵略戦争に反対している。
 イラクでは対IS戦争でアメリカと一時的な協力関係を築いたクルド人勢力も、今回はクルド系左派からアメリカと連携することの危険に警鐘が鳴らされている。
 在外のほとんどの革命派は、現在は武装闘争に否定的であるが、武器を持たない国内の反対派勢力が政治権力を獲得することが容易ではないことも事実であるようだ。

2026年3月26日 愛知連帯ユニオン所属 佐藤隆