国立国際医療研究センター

臨時国会が終了早々の12月21日、岸田政権は新型コロナウイルス対策で厚生労働省所管の独立行政法人に積み上がった剰余金約1500億円のうちの746億円を国庫に返納し、軍事費の財源に充てることを決めた。
これだけでも許しがたいことだが、正面課題のコロナ対策においても政府と厚生労働省は、患者と医療労働者、介護労働者をそっちのけにして、利権あさりを繰り返している。

「焼け太り」と汚職

コロナ流行後、厚生労働省の関係組織は焼け太った。昨年8月には、国立国際医療研究センターと国立感染症研究所を核に「日本版CDC」創設が持ち上がった。
国際医療研究センター、JCHO(独立行政法人・地域医療機能推進機構)、国立病院機構には巨額の補助金が流れ込んだ。3つの組織が受け取った補助金の総額は、それぞれ19年度6・7億円、13・0億円、45・4億円から、21年度はそれぞれ51・9億円(7・7倍)、569・4億円(43・8倍)、1317・2億円(29倍)に増えている。
組織の体質も問題だらけだ。
昨年、千葉県で発生した「小松電器」による贈収賄事件。国立病院機構が運営する下志津病院の企画課長が、19年7月~20年9月、同病院が発注した設備工事などを受注できるよう便宜を図った見返りとして、小松電器から飲食や旅行の接待(約60万円相当)や、高級ブランド品など(約30万円相当)を受け取った。国際医療研究センターの係長も、事務用品納入の契約で便宜を図り現金約270万円を受け取り、飲食など約60万円、物品約50万円相当を受けた疑い。いずれも逮捕された。コロナ禍の最中に旅行や飲食の接待を受けていたというのだ。
これらは氷山の一角だろう。多くの人命が失われ、医療や介護労働者が「崖っぷち」の奮闘をしている最中に、腐敗が繰り広げられていた。

5類化に抵抗

昨年、全国知事会などいくつかの団体がコロナを感染症法の「2類から5類」に格下げするよう政府に要望した。これに厚生労働省「専門家会合のメンバー」たちは抵抗している。その「理由」は主に、次の2点である。
①入院調整。患者が増加したとき、行政による入院調整が行われず地域を越えた調整も難しくなることが懸念される。
②治療費の負担。治療費が公費で負担されなくなり、感染者が検査や治療を受けない、受けられない可能性がある。
5類に下げれば「治療費が自己負担になる」ということだが、政府がその気になれば、自己負担分の助成はいつでもできる。実際に政府はコロナ対策の剰余金を勝手に軍事費に転用すると決めているのだ。これまでに使われていないコロナ対策予算が一体どれだけあるのか、その全容は明らかにはなっていない。
また、「これまで診てきた病院に、これからも患者が集中する」というがそんなことはない。第7波で感染症指定病院や大学病院に患者は集中しなかった。昨年8月段階のJCHO、国立病院機構、国立国際医療研究センターの即応病床の患者受け入れ率は、それぞれ72%、65%、42%(医療ガバナンス研究所・山下えりか氏調査/8月3日)。
患者が集中しなかったのは、オミクロン株が弱毒化したことと、重症化がおもに高齢者であり、その多くが持病を抱えた要介護者だったからだ。現在の第8波でもこの傾向は変っていない。
このような患者のケアは、開業医、市中病院、訪問看護、訪問介護の専門家がチームを組んでやるのが本筋だ。急性期病院が果たす役割は、コロナ禍発生当初より小さくなっている。患者の命を救うことを考えれば、自宅にいながらでも患者の状態に合わせてケアすることだ。無理やり感染症拠点病院に入院させることではないのだ。
厚生労働省と医療技官が望む「2類据え置き」では、患者に求められるケアは難しい。

医療と介護を取り戻す

私は、これまで政府と厚生労働省が「感染症2類に見合った、きちんとした医療と介護の体制をとること」を中心に意見を述べてきた。オミクロン株への入れ替わりにより病状が変わってきたことに踏まえ、今後は「医療無償化と5類格下げのセット」を中心に考えていきたい。
住民と現場に医療と介護をとりもどすこと。政府と厚生労働省に情報公開を迫り、地域医療・介護を中心としたコロナ対策の新段階の一端を担うことが、私たちの役割だろう。(小柳太郎/介護ヘルパー) ※本稿は医療ガバナンス研究所理事長・上昌広氏の意見を参考にした。