
政府は通常国会で「LGBT理解増進法」を可決、成立させた。LGBTにかんして求められている法整備は、同性婚を認める法律、LGBT差別禁止法、トランスジェンダー関連法の3つがある。これらは世界の大きな流れである。しかし、日本では前の2つの法律には手をつけず、3つ目の関連法についても日本学術会議が既存の「性同一性障害特例法」を廃止し、新たに「性別記載変更法」制定を提言するほど決定的に遅れている。
岸田首相の「(同性婚で日本の)家族観や社会が変わる」発言や、荒井まさよし勝喜・元首相秘書官の「(同性婚の人を)見るのもいやだ」という差別発言など日本の政治トップの人権意識の愚劣さが世界をあきれかえらせたのは、つい最近のこと。いつになったら、この国はジェンダー・ギャップ指数が146カ国中125位という恥ずべき状況から脱出できるのか。
このLGBT理解増進法は、「差別禁止法」でも「平等法」でもない。マイノリティ(少数派)に対する差別が行われても、それを放置し、対応することもしない。
しかも「マジョリティ(多数派)の安心への留意指針」となっていることへの批判は厳しい。LGBT当事者の思いを完全に裏切っている。
それでも「亀の一歩」と言えるのか。記者クラブで会見した稲田朋美氏に、百田尚樹などヘイトスピーチ(人の内的属性、人種、宗教、ジェンダーなどの個人やグループを標的とする攻撃的言動)の常習犯たちは、「(稲田は)嘘つき」「左翼になった」「虚飾の女王」などとわめきちらした。
かつて、自衛隊の日報隠ぺい問題で防衛相の職を追われた稲田氏だが、「女装男性がトイレに入ってくる」などと、臆面もなくトランスジェンダー差別を扇動する自民党内の下劣な連中に苦慮する姿を見ると、同情を禁じ得ない有様だ。
LGBTについて考えようとする人は、ぜひ『LGBTを読み解く』(森山至貴・ちくま新書)を読んで欲しい。「普通」という偏見に気づかされる。LGBT当事者たちとともに、権利拡大のために汗をかこうと思う。
(村田)
