3月20日昼頃、福井県高浜町の音海(おとみ)展望台は人でごった返していた。全国から老朽原発をとめようとバスや自家用車で集まった人びとと、それを規制する警察官たちによって。

 隊列を組んで出発するデモ隊の横に貼り付いている警官らが、「反対車線も車が通りますから出ないで」と規制をかけようとする。しかしデモ中は車は1台も通らなかった。通ったのはゲート前でシュプレヒコールを上げている時の1台通っただけだ。

 ��浜原発の正面ゲート前では、道路を挟んでゲートの反対側の側道に沿って急ごしらえの柵が作られていた。デモ隊は、宣伝カーとともにその柵と斜面の間に押し込められる形になった。

 警察側が当初予想したよりデモの参加者数が多かったため、用意した柵のなかに収まりきれない。警官らがさかんに「もう少しつめてください」と叫ぶ。

 ゲート内では、木原壮林(そうりん)さん、中嶌哲演(てつえん)さんら3人が3・20申し入れ・抗議行動参加者を代表して、申し入れ文書を読み上げて、関電側に手渡した。申し入れ文の最後には、「貴社が、私たちの再三の危険性指摘を無視して原発を稼働して、重大事故が起こった場合、それは貴職らの故意による犯罪であり、許されるものではないことを申し添えます」と。

 まったくそのとおり。関電は、この言葉の重みを受け止めて、老朽原発の稼働をあきらめよ。

▽原発の電気はいらない

 午後2時から高浜町文化会館で「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」が開かれた。参加者は400人。地元福井はもちろん、福島、名古屋、大阪、首都圏から発言が続いた。また労働団体からの発言もあった。

 メッセージは、井戸謙一弁護士ほか、北海道泊から九州まで15の団体・個人から寄せられた。

 地元からは、「原発の電気はいらないという声を福井県知事に届けてほしい」「県民の安全を考えるならば、知事は原発再稼働に合意しないでほしい」という訴えが会場に響いた。

 すべての発言を終えて町内デモに出発。家並を縫いながらデモ隊の長い列が続く。時折、家々の間から海が見える。「こんなにきれいな海の近くに原発を作るとは」という思いが胸に迫った。(土屋さゆり)