
岸田文雄首相は、8月24日、首相官邸で開いたGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、原子力発電の本格活用に向け、原発の運転期間の延長、原子炉の新増設や建て替えを進める姿勢を明らかにし、「年末に具体的な結論を出せるよう検討を加速してほしい」と指示した。
2011年の福島原発事故は多くの人びとの生業を奪い、住むところを奪い、被ばくを強いてきた。こうした問題は何一つ解決していない。そうした中で、何が次世代型原発か。運転延長か。
原発の新増設を凍結してきた政府方針を大転換する理由として岸田首相は、ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の高騰や電力需給のひっ迫をあげた。しかし、ウクライナ戦争で明らかになったのは、原発は格好の攻撃目標になるということだ。
節電こそ現実的
また電力のひっ迫は原発なしでも乗り越えられる。「老朽原発うごかすな! 実行委員会」は具体例をあげて、「電力ひっ迫には需要抑制と節電が現実的」と訴えている。
今年3月16日に福島県沖で発生した地震の影響で、東京エリアの火力発電所6基が停止した。経産省は、「同月22日に電力需給が厳しくなる」として「需給ひっ迫警報」を出した。
この時、揚水発電と広域での電力融通に加え、当日の8~23時の時間帯で4395万キロワットの節電が需要側で行われた。まさに「信じられないような効果があった」(東電PG岡本副社長談)。原発を稼働しなくても節電によって、電力ひっ迫を解決できることが証明された。
原発の稼働は40年を限度とし、例外として一度だけ20年以内の延長が認められている。今回、岸田首相が表明した方針転換を阻止することができれば、いずれ「原発ゼロ社会」が実現できる。原発事故や被ばくの心配のない社会は可能である。
(池内潤子)