
私たちは世界に平和憲法の約束を守ります。/二度と戦争は起こしません。加わりません。/私たちはいかなる戦争にも反対します。/私たちは銃を取りません。/紛争は話し合いで解決します。/侵略されたら直ちに白旗を掲げ降伏します。/日本が戦地になったら避難民になり生き延びます。
/世界に日本への支援と平和的解決を訴えます。(後略)
―「PTSDの日本兵と家族の交流館」の宣言(ホームページより)
ウクライナの首都キーウで、バイデン大統領とゼレンスキー大統領が抱き合っている写真が全世界に配信された。バイデンはその演説で、「欧米は総力をあげてロシアと戦い、ウクライナを解放する」と血盟を誓った。
G7のなかで国のトップがウクライナを訪問していないのは日本だけとなった。米国は、岸田首相に5月のG7広島サミットまでにウクライナを訪問すべきだと圧力をかけているという。こうした動きの先に待ち受けている未来は、暗黒でしかない。
虚構の「台湾有事」
一方で、日本では「台湾有事」が呼号され、南西諸島(九州南部から台湾北部にかけて点在する島々)に陸上自衛隊のミサイル配備が急ピッチで進められている。政府は昨年12月の安保3文書改定で、防衛費をGDP比2%へ引き上げる大軍拡と敵基地攻撃能力(反撃能力)保有など安保政策の大転換を決定した。
中国は1981年に台湾の「平和統一政策」を宣言しており、現在もそれを継続している。また台湾の世論調査(22年6月)では「永遠に現状維持」がトップで28・6%、「現状維持し、将来再判断」が28・3%。「現状維持し、独立を目指す」が25・2%。「いますぐ独立」はわずか5・1%にすぎない。台湾が一方的に「独立宣言」する可能性がゼロである以上、中国が「平和統一政策」を放棄する理由はない。
こうしてみれば「台湾有事論」が日米政府の合作による虚構であることは明らかだ。しかし戦争とはこのようにして作られ、世界全体を巻き込んでいく。それが私たちの目の前で進行しているのである。先日の訪米時にバイデンに嬉々として駆け寄る岸田の写真を見ると、米国製武器を爆買いさせられるのも頷ける。日本は進んで米国の属国化しているのだ。こうした事態にどう立ち向かうことができるのか。
かつて私は「帝国主義政府をプロレタリアート人民の内乱で打倒する」ことが戦争を止める唯一の道だと信じてきた。その後レーニン主義と決別して、21世紀の先進国における新たな闘いを追求してきたが、いまだ暗中模索。日々焦燥に駆られている。
左翼陣営の混迷
左翼陣営の内部でも混迷があるようだ。「ウクライナ人民の民族解放闘争を断固支持すべき」という意見がある。しかし、ゼレンスキーが依拠しているのは米・英・仏・独の軍事支援だ。大量の武器や弾薬の投入によってウクライナは世界戦争規模の戦場となりつつある。武器供与のエスカレートが続けば、ロシアによる核攻撃の危険性が高まる。その結果はウクライナの壊滅ではないだろうか。
また一方では、ロシアのウクライナ侵攻は「NATOの東方拡大」に原因があり、米欧のロシア包囲への対抗措置だという意見もある。こうした意見では、ロシアを非難することは「戦争の本質を見誤るもの」という。だからといってロシアの侵略行為を免罪して良いはずがない。私は「即時停戦を最優先させるべき」という立場だが、その実現論を持ち合わせているわけではない。
しかし、南西諸島へのミサイル配備を強行する様を見ていると、再び沖縄を「本土防衛の捨て石」にしようとしているとしか思えない。しかも今度の「本土」は日本ではなくて、米国なのだ。
もしも中国との戦争が勃発したら、真っ先に攻撃されるのは南西諸島のミサイル基地だ。日本が攻撃能力を増強すれば、相手もそれを上回るべく攻撃力を増強するだろう。子どもでもわかる論理だ。
日本と比べて人口で10倍以上、国土面積で25倍以上、GDPで3・5倍以上の中国に岸田首相は軍拡競争で勝てると思っているのか。かつて米国に戦争を挑んだ「亡国」の道と同じではないのか。「台湾有事」を呼号して米国の先兵となって中国を挑発するのは即刻やめるべきだ。
非武装ほど強いものはない。中立ほど安全なものはない。私は、「非武装中立」のほうがはるかに現実的な選択肢だと思う。 (つづく)