訪問介護の現場で悩ましいのが、ハエやゴキブリ対策です。介護施設では生ゴミを全館の1カ所に集中するなどの対策がされていますが、訪問介護ではそうはいきません。そこで「施設のような自由のないところに行きたくない」という利用者さんに「締め付け感がないように衛生管理を行う」という難しい条件のもとで、ヘルパーと虫たちとのたたかいが始まります。
ハエ・ゴキブリ対策そのものは簡単です。生ゴミを常に1カ所に集め、こまめにゴミ回収に出していれば問題は起きません。しかし「高齢化でゴミ収集場まで行けない」「認知症で収集日がわからない」「引きこもりウツ症状」などの場合は、あっというまにゴミが溜まってしまいます。
そのため、朝8時頃にあちこちでヘルパーがゴミ出しをしています。
深刻なのは、家のなかに生ゴミや食べ残しが常温でちらかっている場合。こうなるとハエ・ゴキブリは家の中を活発に跋扈(ばっこ)します。
状況がひどい場合、ご本人とケアマネの同意をもらった上で、ホウ酸スプレーを使います。100円ショップのスプレーボトルに、ホウ酸3グラムと水200CCででき上がり。コツは、生ゴミを入れるゴミ袋の内側にあらかじめ水滴ができるほど、まんべんなくホウ酸水を吹き付けておくこと。あとはゴミを入れるごとに、何回かスプレーを繰り返せばOKです。
効果はてきめん。ハエの幼虫やゴキブリが元気に走りまわっていた市営住宅のお宅では、開始1週間で効果があらわれ2週間後にはほぼ沈黙。そのお宅に入っていた訪問看護のスタッフさんからとても感謝されました。
ホウ酸は、ハエ・ゴキブリには毒性が強いのですが、人体には食塩レベル。ヒトを含めた脊椎動物はホウ酸を腎臓から体外に排泄しますが、腎臓がない昆虫類はホウ酸が体内にたまり、代謝が止まって絶命するとのこと。(小柳太郎/介護ヘルパー)