国会で入管法改悪の審議が始まった5月、「コロナ禍と『移民』と入管法の改悪」という講演会を知り、参加した。移民問題、入管法の改悪で何が問題になっているのか。

 外国人労働者というのは、「存在するのに、存在しないことになっている」人たち。法的なシステムが欠落している。戦前戦後を通じ、日本では「移民が社会を支え続けている」という事実が隠され続けてきた。

 東京、大阪など大都市は、地方出身の労働者と外国人労働者によってつくられた。人権に国境はないので、「国民という概念では括れない人々が存在する」。私たちは、それを考える必要があると述べる。

 外国人労働者の実態。プレス機で指3本を落とし、労災も適用されない。100万円だけ渡し、帰国させようとした。トイレの回数と時間をチェック、1分につき15円の罰金を取った。2年半無休、パスポート取り上げ、強制貯金、タコ部屋生活、長時間労働などの労働相談を受けた。それらが紹介されている。

 私たちは、「ニューカマー」(80年代以降に日本に移住した人々)と「オールドカマー」(朝鮮半島や中国、台湾など旧植民地から労働者として来たり、連れて来られたりした人たちと、その子孫)を縛る入管体制…。

 日本社会をじわじわと破壊する「使い捨て労働」の節では、「気づかないうちに、私たちの社会自体がじわじわ腐ってきている。この偽装が、倫理観や労働基準、人権の感覚をも壊してしまう。さらには、いわゆる経済的合理性も壊している」と指摘する。

 「明日のために」。私が労働組合に参加し、最初に獲得した言葉だった。「今しかない!」ではなく、明日のために活動し、生きていく。鳥井さんが参加する全統一労働組合には、参加型・自主対応型運動をめざし、3つの合言葉がある。一つは「違いを尊重しよう」、二つは「ひとりじゃない」、三つは「できることから始めよう!」。

 一見ばらばらのような労働者が、違いを尊重し支え合い、「孤立させない」「できることから始めれば道が開ける。変えられる」ということだ。本書からは、それが伝わってくる。(高崎)