コロナ禍のもとの通常国会で衆参憲法審査会が開かれ、CM規制にかかわる立憲民主修正案を与党が丸呑み、改正国民投票法を成立させた。改正法、9条、緊急事態条項など高作正博さん(関西大教授)が話した。(9月、大阪府内。取材・文責/竹田)

▽最近の改憲論議

 この1年、改憲論議はどうだったか。通常国会で憲法審査会が開かれ、国民投票法改正法が成立した。「CM・ネット規制、3年を目途に必要な法制上の措置。1.天災等の場合、その他投票に係わる環境整備、2.賛成、反対の運動の資金、有料広告放送の制限、ネット等の適正利用の確保」などというもの。これで向こう3年間、改憲は進まないのか。自民、立憲の考え方、理解が違っており、3年間は止まるという保障はない。  

 加速化は、どうか。4月に、自民党の改憲推進本部・最高顧問に安倍前首相が就任した。改憲を急ぐというアピールではないか。

 

▽コロナと緊急事態条項

 昨年来のコロナ禍のもと、新型インフル等対策特別措置法にもとづく緊急事態宣言が繰り返された。緊急事態宣言、あるいは憲法に緊急事態条項への慣れ、ハードルが下がるのではないか。緊急事態宣言と改憲による緊急事態条項は、まったく内容が違うが言葉は似ており、「憲法に盛り込まれても大したことはない」と受け止められると非常に危険だ。緊急事態条項の2つの問題、1.権力が内閣に集中する。法律によるべきことが内閣単独でできる。2.人権を制限できる。

 同時に緊急事態条項の効果は、実際には非現実的である。一方、いったん人権を制限できる条項をもってしまうと、歯止めは利かなくなる。

 

▽「いつでも発議可能」 憲法改正の発議は、衆院100名以上、参院50名以上の賛成によるのと、与野党の合意による2方法ある。自民党は「審議に応じないなら、前者でいく」と野党に圧力をかける。今回の投票法改正は「施行後3年を目途に法制上の措置」ということになったが、立憲は「CM・ネット規制がされなければ発議は不可」、自民は「今回の改正で、いつでも発議可能」とし、与野党で解釈が違う。

 衆参両院3分の2の可決をもって発議とされ、国民に提案したことになる。今回の総選挙で自公が議席を減らしたとしても、維新がつくだろう。総選挙の帰趨は非常に重要となる。発議から最長180日以内に国民投票を実施。そこから国民投票運動となり、衆参各10人による国民投票広報協議会が「改正案要旨、対照表、賛成・反対意見」などの広報をつくる。

 賛成、または反対の投票をする、しないようにの勧誘運動、ビラ、宣伝カーなど制限なし。事前運動、戸別訪問の禁止もなし。テレビなどの有料CMは、投票日前14日間は禁止だが、有名人やアイドル・タレントらが「私は賛成」という放送はできる。最大の広告代理店、電通は一貫して自民党の広告宣伝を請け負っており、国民投票の結果を左右する。資金力のある方が圧倒的に有利になる。時間や回数、費用総額などの規制が必要では。

 

▽最低投票率の規定なし

 公選法は適用されないことになっている。公務員・教員の地位利用に刑罰はないが、懲戒処分はできる。運動全体に、萎縮が生じかねない。

 最低投票率の規定がないのは大きな問題だ。賛成、反対に○を付け、その合計が投票総数となる。白票や無効票を除くが、そこにも意志表示が含まれるのではないか。50%以下の投票率で、過半数なら有権者25%の賛成で憲法改正ができてしまう。(つづく)