
ジャーナリストの白石はじめ草さんの講演「誰にも言えなかった甲状腺がん患者の真実」を聞いた(5日、大阪市内)。そこで語られたラジオアイソトープ(RI)治療の壮絶さは忘れられない。RI治療とは放射性ヨウ素を甲状腺がん患者に投与して、肺などに転移しているがん細胞を破壊する治療。ヨード制限食を与えて患者の体内のヨウ素量を減らし、放射性ヨードを摂取しやすい体にする。放射性ヨードの線量は100~150ミリキュリーで、30ミリキュリー以上投与された患者は、最低2日間個室に隔離される。面会も謝絶だ。
原発事故によってまき散らされた放射性物質によって甲状腺がんを発症した患者の体に、再び放射性物質を投与するのだ。その治療の過酷さは、資料として配付された「311子ども甲状腺がん裁判ニュースVOL3」に掲載された「原告5さん」(女性)の意見陳述全文に切々と綴られている。3回目の手術を前にして「漠然とした不安。これからのことが何も考えられない」という彼女が「でも、私は病気になったのが、身内や友達ではなく、自分でよかったなと思ってます。友だちや家族がかか罹った方が、つらいんじゃないかと思う」と書いている。泣けてくる。でもそんな涙が安っぽく感じられるくらいの経験を、原告の彼女、彼たちは経験しているにちがいない。ぜひ「311子ども甲状腺がん裁判」のサイトにアクセスして支援してほしい。(池内潤子)