
樋口英明元裁判長は14年5月21日、福井地方裁判所で大飯原発の運転を差し止める判決を出した。その理由を述べたのが本書だ。巻末に収録された判決要旨は、私も判決直後に読んだが、まず平易で分かりやすい文体に驚いたことを覚えている。
本書は高校生以上の人が読んで分かるように数々のデータを用いて書かれていてとても分かりやすい。筆者は、原発の運転が許されない理由を5点あげる。
第1、原発事故のもたらす被害は極めて甚大。第2、それゆえ原発には高度の安全性が求められる。第3、地震大国日本で原発に高度の安全性があるとは、原発に高度の耐震性があることだ。しかし第4に、わが国の原発の耐震性は極めて低い。第5、よって原発の運転は許されない。
この論理によれば、日本にある原発はすべて廃炉になるべきで、裁判官も判断しやすいと筆者は言う。原発反対派の人が裁判を起こすときは、こむずかしい専門技術訴訟という土俵ではなく、理性と良識という土俵の上でたたかうことが大事だと教えてくれている。
3・11福島第一原発事故を目の当たりにした私たちには、原発を全廃する責任と覚悟が必要だと教えてくれている。ぜひ、「原発は危ないかもしれないがそれなりの対策をとっているはず」と考える人も、「原発はダメだ」と考える人も、そして裁判官にも読んでほしい一冊だ