摩文仁の丘の海岸線

「台湾有事」にかこつけた自衛隊の配備の拡大、安保三文書など、大軍拡が続く。いま、「辺野古埋め立て反対の国会請願署名」運動を行っているが、さらに問題がある。沖縄戦の最後の激戦地だった摩文仁の丘からの、遺骨混じりの土砂採掘である。土砂は辺野古新基地建設の埋め立て土砂に使われるため、開発業者の計画を阻止してきた案件である。
県は「開発行為の中止は私権制限につながり、難しい」と判断し、業者に「必要な措置を執るよう求める」という措置命令しか出せなかった。政府が仲介させた公害等調整委員会が提出した和解案も、沖縄県の措置命令の域を超えるものではない。けっきょく「遺骨が発見された場合、半径5メートル範囲で2週間工事を中止し、遺骨調査を行う」というものだ。
重機でかき回しても、小さな遺骨が発見されるはずがない。発見されて工事がとまるなら、業者は報告しないだろう。業者は早ければ3月中にも開発届を出し、「農道を重機の出入り口にする転用許可」が出れば、工事を再開するだろうとのこと。
全国の1741自治体のうち227の自治体(沖縄県31、県外196)が、「遺骨混じりの沖縄南部土砂の採取中止を求める」と決議している。この世論に「激戦地域からの土砂で埋め立てはしない」と言えば、開発業者も土砂採取をあきらめるだろうが、防衛省は明言しない。遺族の問いかけに、何も答えない政府である。
事態が動きそうなため、遺骨の発掘を続けてきたガマフヤーの具志堅さんたちは、遺族の声を行政に届けるため、3月4日、読谷でも遺族公聴会を開いた。「南部のどこで亡くなったかはわからない」という遺族。「遺骨ではなく小石(琉球石灰岩)が入ったお骨箱が届いた」と証言した人もいた。政府は、激戦地の小石は霊石とみなしていたはずである。「その霊石を、基地を造るために使うのですか」という問いかけだ。

緑の地を県有地に

そういう問いかけで政府に翻意を迫る一方、ガマフヤー具志堅さんたちは激戦地を祈りの場として聖地にするよう取り組んでいる。
摩文仁の遺骨混じりの土砂採掘が焦点になっているが、人目に付かない場所では石灰岩の採掘をしている業者がかなりあり、すでに開発されている場所も多い。しかし、まだ、窪地や崖は利用価値がないと思われ、緑のある未開発地である。ガマがあり、そこに身を隠しながら亡くなった方たちの遺骨が眠っている。その崖が埋め立て用に狙われる前に、具志堅さんたちは県に次のような要請文を送ろうとしている。
①沖縄戦の激戦地である南部の未収容戦没者遺骨を保護するため、県が未開発緑地帯を県有地とすること。②県有地とするための財源は「ふるさと納税」を活用して全国の遺族・国民に戦没者の尊厳を守るための浄財提出を呼びかけること。
私たちも賛同した。声をあげる。(富樫 守)