
「戦争を起すことはそれほど難しくない。国民に対し、我々は攻撃されかけているのだと危機感を煽り、平和主義者には愛国心が欠けていると非難すればよい」――ヒトラーから後継指名を受けていたナチスの幹部、ヘルマン・ゲーリングが1945年、ニュルンベルク裁判で発言した言葉だ。
「この国の存続が危ない」「近々攻撃される可能性が高い」など、そんな危機感への強烈な自意識が市民に生み出され、人々が、一人一人が、持っていた判断基準を更新させていく。紹介したゲーリングの言葉の前段には、「普通の市民は戦争が嫌いだ。しかし政策を決定するのは国の指導者達であり、国民をそれに巻き込むのは、民主主義だろうとファシスト的独裁制だろうと、議会制だろうと共産主義的独裁制だろうと、常に簡単なことだ」と…。
攻撃されなくても「自衛隊出動」
高市首相は「台湾有事が存立危機事態となり得る」と言い、「日本は自衛隊を出動できる」とした。自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、「実力」「軍事行動」をもって阻止すると決意した。このことを何度も繰返し、忘れてはいけない。
3月の日米首脳会談でも高市軍国少女は、ホワイトハウスでトランプとはしゃぎ回り、挙げ句の果てに「世界中に平和と繁栄をもたらせるのは、ドナルドだけ」とトランプを持ち上げた。「世界中に平和と繁栄をもたらすのは、トランプだ」と…。ええ加減にしろよ。
ホルムズ海峡の航行安全確保に(自衛隊を派遣するには)、高市首相は「憲法九条の制約がある」としていたが、ある米政府高官は「総理が海上自衛隊の支援を約束した」といっているように、高市首相は自衛隊派兵に「密約」まで交わしているではないか。
「改憲」に熱帯びる国会
国会の憲法審査会では、憲法改悪が熱を帯びている。高市首相は自民党大会では「時は来た」と言い、その実現に突き進んでいる。高市軍国少女は、22年前に『憲法改正のススメ』なるものを書いている。「国民はどうあるべきか」―、「日本国民は国防の義務があり」とし、「有事の際、私権一部制限に協力する」とする。憲法の前文を含め「国会で熱を帯び始めている」憲法改正の議論…。「時は来た」と、その実現に強い意欲を示している。22年前に書いた『憲法改正のススメ』…。そこには「『国民は、どうあるべきか』を冒頭に示す」「日本国民は国防の義務を負う」「有事の際、私権一部制限に協力する」など、具体的に記されていた。
「憲法九条“おめでたい”」高市発言
彼女の、憲法への考え方が浮かび上がる。憲法前文、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を、「非常におめでたい一文」であると言い、「もし改憲の機会があれば、真っ先に変えようと思っている」とする。
高市首相の改憲案は、自衛隊を「国防軍」とすることに加え、「日本国民は国防の義務を負う」という文言の追加しようとしている。「国防」が憲法上の義務となれば、それを理由に「表現の自由」や「移動の自由」など、私権そのものが制限されていく。さらには、将来的には、徴兵制が構築される。
議論の真っ最中の「緊急事態条項」はどうか。「災害時の議員任期延長」などを言っているが、とんでもない。緊急事態を口実に、内閣総理大臣に権力を集中させ、国民の権利を一括して制限しようとしているのだ。政府にとって都合の良い「強い国」をつくるための道具に、「緊急事態」なるものが使われ、国家が国民を動かしやすくする憲法づくりをやろうとしている。
ここでもう一度、ヘルマン・ゲーリングのことばを思い出そう。「戦争を起すことはそれほど難しくない。国民に対し、我々は攻撃されかけているのだと危機感を煽り、平和主義者には愛国心が欠けていると非難すればいい」のだ。

周辺事態から「重要影響事態」へ
高市政権はイラン情勢をめぐり、ホルムズ海峡へ自衛隊派兵する方法を検討している。改憲情勢を見据えながら模索し続けている。1991年に、ペルシャ湾へ自衛隊の実動艦隊部隊、掃海部隊が派兵されている。この掃海部隊の派兵は、1950年の朝鮮戦争時以来の掃海活動であった。さらに「護衛艦」の派兵も検討している。「中東海域での日本関係船舶の安全確保」ということだが、際限のない自衛隊海外派兵が「憲法九条」など関係なく続けられるようとしている。戦争法、武力攻撃事態法をさらに拡大解釈し、周辺事態から重要影響事態とし、イラン戦争、ペルシャ湾への護衛艦の派兵を追及している。米軍への補給、輸送、弾薬の提供…、戦闘行動へ発進準備をしている航空機への給油も、「戦闘地域」での支援もオーケー。自衛隊員が、人を殺し殺される戦争に動員され、命の危険にさらされようとしている。
「平和憲法のおかげで戦争によって他国の人々を殺さずにすんだ」だって…、冗談を言うなよ、恥ずかしくないのか。嘘つくなよ、憲法九条があったのに、すでに派兵もしていたし、なんでもやってきたではないか。(つづく)(嘉直)
