
小泉政権による「イラク派兵」
2003年、イラク派兵を閣議決定した。当時の小泉首相は、自衛隊のイラク派兵に国家の意思を重ねて見せた。国家意思を騙(かた)った。このイラク自衛隊派兵は、参戦に等しい。戦後史を画する暴挙に、憲法を持ち出し、国家意思を重ね合わせたのだ。
憲法前文を持ち出し、「日本国家の理念、国家としての意思が問われている」という。「さらに日本国民の精神が試されている」という。協調主義のファシズムの到来だ。憲法前文から国民主権、人権尊重、平和主義を捨象し、「国の理念」「国家の意思」「日本国民の精神」を捏造し、こじつけ、これらを肯んじない私たちを威嚇し、自衛隊海外派兵を正当化した。
小泉首相から10年後の2025年…。安倍首相は戦後70年の、この年に集団的自衛権行使容認と安全保障法制の整備、海外派兵による武器使用の容認などを、「積極的平和主義」として打ち出した。彼のいう「国際貢献」とは、「海外で戦争をする」国づくりに他ならず、紛れもなく戦後日本のあり方を根底から覆したものだった。

「集団的自衛権」を容認 安倍政権
「安保法制」では、「集団的自衛権」を初め世界中での武力行使が、自衛隊の任務とされた。このときの「国際貢献」という「積極的平和主義」を、その提唱者であるノルウェーの平和学者、ヨハン・ガルトゥング博士は、「貧困や差別といった構造的な暴力のない状態」を「積極的平和主義」と定義している。安倍首相はこれを、どう誤ったのか、どうこじつけたのか、全く知らなかったのか、まるで牽強付会そのものである。
「積極的平和主義」などと語り、自衛隊の大増強と侵略戦争軍隊化を遂げた安倍政権、その安倍政権から10年後の2026年…。高市首相は「日本列島を強く豊かに」を連呼する。施政方針では、「私はこの使命を、政策の積み重ねの上に、全身全霊をかけて成し遂げる」「日本の総合的な国力を徹底的に強くしていく」という。「国論を二分しても、なしとげるぞ」と息巻いて見せる。「国家安全保障戦略(NSS)、安全保障関連三文書改定に向け、議論を本格化させたい」という。
「時は来た」のか
スパイ防止法案、国家情報局(会議)創設、国旗損壊罪など、軍事中心国家体制へ全面的転換のため、治安・戦争法案を成立させようとしている。安保三文書の改定とは、武器輸出の5類型撤廃=殺傷兵器輸出であり、防衛産業を中心基軸に据え、経済安保政策として全産業、経済・社会を軍事・戦争体制に向かわせるものだ。「防衛力強化と経済の好循環」は、私たちを戦争経済と戦争そのものに引きずり込むものだ。「経済の成長戦略」を語り、経済の軍事化、いま再び「富国強兵」を夢見ている。憲法改悪に向け「時は来た」と、軍事力の制限規範である「憲法九条」の改悪である。
憲法九条
憲法九条を、あらためて見てみよう。「戦争放棄」「交戦権の否認」「戦力の不保持」を内容とする。しかし、安保法制は、すでに世界中での武力行使を自衛隊の任務としている。もし、「自衛隊を明記する」改憲がされた場合、憲法規定が優先され「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」の憲法九条は死文化され、自衛隊(維新の会は「国防軍」、参政党は「自衛軍」という)が、日本国軍として世界中で戦うことも、憲法上問題ないとされる。
「自衛隊」「国防軍」「自衛軍」など、どのような名称であろうとも、自衛隊を明記する改憲などされてはならない。憲法に自衛隊(国防軍)が明記されるなら、「徴兵制」が憲法上可能になってしまう。「自衛隊の維持は、政府の憲法上の責務である。そのために徴兵制を実施する」とされてしまう。
高市政権「戦争をする国づくり」
徴兵制は、非現実的か。とんでもない。ドイツでは2026年、14年ぶりに、連邦議会で志願制の兵役導入を可決した。ロシアによるウクライナへの全面侵攻を受け、防衛力を強化する一環とする。デンマークでは、2025年7月1日以降に18歳となる女性に対し、徴兵の可能性を判断するための「適性審査日」へ登録を義務付けることとした。男性に適用されている措置と足並みをそろえると同時に、欧州における安全保障上の懸念が高まるなかの、防衛力強化である。
ノルウェーでは19歳から44歳までの男女が対象とされ、2015年から女子にも兵役義務が課せられた。「今さら徴兵制」と、非現実的な話などでは全くない。世界で進行しているではないか。今、わが国、高市政権のもと進行する「戦争をする国づくり」…、「徴兵制反対」などを言うと弾圧に使われるのが「スパイ防止法」だ。すでに、スパイ活動の対処司令塔「国家情報局・国家情報局設置法」が成立している。
軍拡と一体に急速に進められているこの動きは、侵略戦争遂行のための「憲法改悪」「徴兵制導入」「国民防諜体制」、そして治安維持法体制に向かうものである。ことは、大げさではない。参政党代表・神谷は、「極端な思想の人たちはやめてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法だ」と言っている。思想で選別し排除するやり方は、戦後民主化の反動として猛威を振るったレッドパージを想起させる。
民間人の戦地派遣も
自衛隊員(「国防軍」)が戦場に派兵されれば、必然的に負傷者が出る。負傷者を想定し、医師や看護師などが戦場に送り出される。「憲法上の組織である自衛隊の円滑な活用をすることは政府の役割」とされ、医師・看護師・建築・土木・運送・通信・港湾・空港に関わる民間業者の戦場への派遣が、憲法上も正当化される。自衛隊(「国防軍」)明記の改憲は、民間人の戦地派遣を憲法的に可能にさせていく。いっさいの物事が、軍事中心に進められる。学問の軍事化、医学の軍事化、軍事研究の正当化、あらゆることが軍事一体化、「社会の軍事化」が深化されていくのだ。(嘉直)(つづく)
◎日本国憲法 第二章「戦争の放棄」、第九条「戦争の放棄・軍備および交戦権の否認」 1、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
