緊急事態条項と戦時統治へ
高市首相のいう「緊急事態条項」は、「緊急事態」を①大規模な自然災害、②感染症の大規模な蔓延、③内乱等による社会秩序の混乱、④武力攻撃、⑤それらに匹敵する事態と定義し、これらを「国会議員選挙が困難な事態」と認定、議員任期延長を可能とする。また、「国会による法律の制定を待つゆとりがない」と認める特別の事情がある場合、内閣が権限を強化し、法律と同等の効力を持つ「緊急政令」を出すこととしている。
五つの「緊急事態」を想定し、内閣が「緊急政令」を出し、戦時独裁体制というべきものに移行していくことが狙われている。緊急事態法は、九条改憲と完全に一体の攻撃であり、戦時型統治体制への転換を図るものだ…と言えないか。
高市首相は、「日本国は自衛のための戦力(国防軍)を持てる」「日本国民は、国防の義務を負う。有事の際(中略)私権の一部制限に協力する」と言う。「非常事態」に対応するための条文そのものを新設し、「『内閣総理大臣への権力集中』や『国民の自由や権利の制限』を書くべきだ」としている。
繰り返す。「日本国民は国防の義務を負う」とされるのだ。緊急事態法の新設と九条改憲は戦時独裁体制への移行であり、戦時型統治体制へ転換をはかるものだ。

大軍拡と武器輸出解禁
軍事費の国内総生産(GDP)比5%化という大軍拡、武器輸出解禁・拡大、戦闘機に戦車、護衛艦(駆逐艦、巡洋艦)、潜水艦などを増強する。スパイ防止法など、戦争遂行国家体制への全面転換を猛然と推し進める。あげれば、きりがない。安保3文書改定の前倒しと、それにともなう非核三原則を解体する。
憲法九条、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を泥足で踏みにじり、鼻先でせせら笑う。このようなやり方を、どう考え、どう怒り、どう抵抗すればよいのか。もう平和に飽き、ひょっとすると無意識に、戦争を望んでいるのか。
そうであれば、何という時代だろう。酷い時代ではないか。言語化し、指し示すことすらできなければ…、解釈改憲どころではない。堂々と改憲を指し示している。平和憲法と戦後民主主義が憎まれ、人間よりも「国家」が大事とされ、歴史的な事実が次々と大手を振って覆されてきている。恐ろしいことだ。

喚くトラツグミ
国家のあり方そのものが、その根本から否定され、造り変えられようとしている。「今」とは、一体何なのか。なぜ「声」が、これほどまでに届かなくなってしまったのか。言葉が、こんなにも身体から剥がされ堕ちていく。彼ら、鵺(注:トラツグミ)どもは「戦争をする国家づくり」へ、三角屋根の館に集い、固まりながら、「戦争を立て」「九条を立て」と喚き散らし、「緊急事態法」をも引き連れながら、「廊下を」走り回っているのではないか。私たちはどうする、どうするのだ。(嘉直)(この項、おわり)
(注)①古来、鵺は頭が猿、手足は虎、尻尾は蛇という妖怪(平家物語では、胴体が狸)のこと。②行進、艦艇写真は、防衛省、海自のHPほかから引用。