
99条「公務員の憲法擁護義務」
高市首相は「日本国民は国防の義務を負う」と言い、現行憲法の前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を、痛烈に批判している。「この非常に『おめでたい』一文を、改憲の機会があれば真っ先に変えようと思っている」と言った。まさか、憲法全文の締めくくり、99条(公務員の、憲法尊重、擁護義務)までは、読み進めていないのか。
平和主義を「おめでたい」と
戦後日本の平和の礎となってきた理念を、「おめでたい」と切り捨てる姿勢とは、なんだ。国のあり方の根本的な転換ではないか。ふざけるなよ。
彼女は22年前に“憲法改正のススメ”を自身のホームページに記していた。しかし今は、見ることができない。消し去っているらしい。彼女の「憲法のススメ」とは、「国民はどうあるべきか」を冒頭に示し、「日本国民は、国防の義務を負う」「有事の際、私権一部制限に協力する」など、具体的な憲法改悪案が記されていた。高市首相の憲法の考え方が浮かび上がる。
自衛隊を「国防軍」とし、緊急事態条項に盛り込み、9条に該当する部分を「独立した主権国家の国民としてのプライドにかけ、『日本の心と言葉を持った憲法』へと書き直すべきだ」と言う。まず前文に、「目指すべき国家像」を書き込む。「国家はどうあるべきか」「国民はどうあるべきか」を冒頭に示すのだ。憲法改悪をやり遂げ、「戦争する国づくり」に邁進するという。
改憲(9条へ自衛隊明記、緊急事態条項設置)が、もはや「当たり前」であるように議論され、首相の高市は自民党大会で「来年発議」と堂々と言っている。これは何だ、何という事態か。

2・26軍部独裁から侵略・戦争
今から90年前、1936年2月26日、「二・二六事件」が起こった。軍部独裁の足がかりとなった。このとき、「天皇は戒厳を宣告す」とした。行政権・司法権・立法権を軍が握り、軍事独裁となった。首都東京は軍政下に置かれ、一切の言論・政治活動が禁止された。
「緊急事態条項」は、この大日本帝国憲法下で80回も乱発されている。関東大震災しかり。戒厳令が使われ、軍事独裁下となった。多くの朝鮮人が虐殺され、青年労働者・社会主義者も殺された。緊急事態条項に治安維持法を組み入れながら、時の政治活動の一切を押しつぶしていく。そうして日本の軍事独裁は、侵略戦争へと突き進み、300万人余の日本国民と2000万人を超えるアジアの人々を殺害した。緊急事態条項は「人間」を守るものでは全くなく、時の「国家と体制」そのものを守るため、国家権力が国家存立を維持するための権限である。

ヒトラー独裁、全権委任法
ナチス・ヒトラー独裁は、なぜ可能になったか。国内の不満や暴動を、「共産主義者によるもの」とし、「ドイツ国民を防衛する大統領緊急令」を出した。緊急事態法、大統領令だ。政府批判を行なう政治組織の集会・デモ・出版活動などが禁止された。「国会炎上」を共産主義者の暴動と決めつけ、「国民と国家を防衛するための大統領緊急令」という非常事態宣言を発令した。
司法手続きなしに、「被疑者」を逮捕する。そしてナチ党過半数議席の獲得である。内閣に権限を集中する「授権法」(全権委任法)をつくり、国会は無力化された。授権法とは「民族および邦の危機を除去するための法律」、議会や大統領の承認なしに、政府が立法権を行使できる法律である。議会は単なる「お飾り」となった。「授権法」は、さらに猛威をふるう。ナチスに全権が集中する。

第二次大戦への道
ヒトラー内閣による事実上のクーデターだった。共産党・社会党への弾圧と政党出版物の発禁処分、さらに「政党新設禁止法」をつくり、ナチ党を唯一の政党とし、労働組合も解散させられる。「ドイツ国元首に関する法」がつくられ、大統領と首相の権限、役職を統一し、「ヒトラー総統」を誕生させたのだ。反対し警戒する世論は、あまりにも少なかった。「国民主権や議会制民主主義の採用」など、20世紀の先駆けともいわれたワイマール憲法は完全に死文化し、事実上の終わりを告げた。
ヒトラーは独裁権を一手に握り、ユダヤ人迫害と対外侵略を繰返し、第二次世界大戦を引き起こした。「緊急事態条項」とは、紛れもなく「独裁者の生産装置」であることがはっきりする。こうして、危機の日常化が絶えることなく繰返されていく。(嘉直)(つづく)
