福島第一原発の貯蔵タンクを視察する太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局およびPIFの専門家チーム=2月10日/撮影:東京電力ホールディングス株式会社

福島第一原発に貯蔵されている核汚染水の海洋投棄をめぐって、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は「(放出計画は)国際的な安全基準に合致する」との包括報告書を政府に提出した。これを受けて政府・東京電力は夏中にも海洋投棄を強行しようとしている。福島県漁連は6月30日の総会で4年連続となる「反対」特別決議を全会一致で決議、諸外国も強く反発している。

IAEAとは、核の「平和利用」の名目で原子力発電を促進することを目的とした組織である。福島第一原発の汚染水の処理については、2021年4月に政府が基本方針を決定する前年に「海洋放出・水蒸気放出ともに適切」との見解を示して、政府の後押ししていた。このような機関が提出した報告書が公平性や客観性を欠いているのは明らかで、およそ「科学的根拠」と言えるものではない。

海上投棄は条約違反

福島第一原発の核汚染水の海洋投棄に以前から反対してきた太平洋諸島フォーラム(PIF)は、6月26日に声明文を発表した。PIFはオーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーなど16カ国2地域が参加する経済協力機構で、1985年、アフリカや東南アジアの非核地帯条約の先駆けとなる南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)を採択した。これは非核地帯条約として初めて、放射性廃棄物や他の放射性物質の投棄禁止を規定したものだ。核汚染水の海洋放出は重大な条約違反である。
PIF事務局は次のような懸念を表明している。
まず日本政府から提供されたデータの質と量が不十分で、安全性を判断できない。また巨大な貯蔵タンク内のごくわずかな一部分がサンプルとして抽出されているだけで、東京電力による測定は統計的に欠陥がある。さらに生態学的影響や生物濃縮に関する考察が著しく欠けており、予測されるリスクについての信頼に足る根拠が見当たらない。すなわち日本政府の言うことはまったく信用できないと批判しているのだ。

トリチウムの危険性

政府や東電は多核種除去設備(ALPS)によって汚染水に含まれるトリチウム以外の放射性核種を全て除去できるかのように宣伝しているが、実際にはセシウム137やセシウム135、ストロンチウム90、ヨウ素131やヨウ素129など12の核種は除去できない。またトリチウムについて政府は「世界中の原子力施設から海に放出されているが、トリチウムが原因とされる影響は見つかっていない」としているが、これはウソだ。米国・シカゴの原発では、06年まで10年以上にわたって数百万ガロンの環境中にトリチウムが放出され、近隣の乳幼児100人以上がガンで死亡し大問題となったのだ。
「ALPS処理水の安全性」はまったく根拠がない。中国は「太平洋は下水道ではない」と批判しているが、まさにその通りだ。「放射性物質は環境中に漏出させない」が大原則だ。そのための陸上保管案として「大型タンク貯留案」「モルタル固化処分案」など現実的で実績のある提案がなされている。これらをまともに検討せず、海洋投棄を強行するのか。それはすべての生命に対する犯罪である。