イスラエルでは人口の70%がユダヤ人で、そのユダヤ人のみ徴兵制がある。男性は18歳から3年間、女性は2年間である。女性の軍人、兵士は米国はじめ世界中にあるが、徴兵で動員されているのは他にはクルド兵ぐらいではないか。
 ガザは福岡市ほどの小さな面積に250万人が住んでおり、世界一の人口密度の高さと言われている。ネタニヤフは「ハマスのみを狙っている」と発言しているが、ロケット弾、戦車砲、空爆を使って「ハマスのみ」などありえない。血まみれの子ども、引きちぎられた遺体 …… 動揺するイスラエル人たちに「あれはハマスがやった」とネタニヤフは弁解し、それどころか、「我々の軍はガザ市民に食料や医薬品を配り援助している」とデマ宣伝する。戦場にいないものはそのまま騙されるだろうが、戦場に送られた兵士は、「真実」を目の当たりにする。それどころか、その悲惨は自らの行為がもたらした結果であると知ることになる。

PTSD うつ病 自殺 酒とドラッグ
 西谷さんは本の中で、国会議事堂前の二張りのテントのことを紹介している。「兵士のPTSDを放置すれば次の自殺者を生むであろう」と大きな横断幕。テントの中にうつろな目をした元兵士がいて、話を聞く。3日前に友人が自殺したという苦しい思いの中で彼は語った。「多くの兵士が精神を病んでいます。6カ月前からここにテントを張って、私たちを追い込んだ政府に対して抗議しています。約2万人がPTSDで苦しんでいますが、それは政府のメンタルケアを受けている人だけですから、実際にはもっと多いと思います。多くの兵士は、あれ程酷い戦争をさせられたのに、感謝の言葉もなく、受け取るものが少ないと嘆いています。多くの家庭が崩壊しています。離婚も多いし、子どもは父親を怖がっている。一日中ベッドで寝てたり、悪夢にうなされたり。薬や酒を大量に飲む。多くの人がアルコール中毒。今までの自殺者は75名ですが、これは公式に認められただけの人数ですから、本当はもっと多いです」。
 ユダヤ社会は想像以上に壊れている。2025年にはイスラエルで46名の女性が殺害されて、しかも犯人は夫や兄など家族がほとんどである。酒やドラッグで家庭内暴力。また、女性の帰還兵はトラウマで子育てができなくなると報告されている。

国連難民救済施設を破壊
 トランプは、国連の米国の分担金を大幅にカットした。2023年10月7日戦闘以降、イスラエルはユダヤ企業で働くパレスチナ人を一斉解雇した。生存の危機はガザだけでなく西岸にも及ぶ。新しく難民も増えた。しかし環境は劣悪で、ある小学校の避難所では、200名に対してシャワー室は一つ。トイレも一カ所(便器が四つ)でもちろん水は出ない。
 そんなパレスチナ人の現状を把握しているネタニヤフは、東エルサレムの国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)本部をブルドーザーで徹底的に破壊した(2026年1月20日)。国際社会からどれだけ非難されても、「トランプに守られているから、何をやっても許される」と考えているのだ。破壊されたUNRWA本部前にいたユダヤ人は、「国連は難民支援と言いながらハマスに食料を届けてバックアップしていた。破壊されてハッピーだ」と語った。悲しい現実だが、これがユダヤ人の多数派の姿である。

平和と和解を求めるユダヤ人の闘い
 イスラエル人のアラブ人蔑視と激しい憎悪に絶望的な気持ちに陥るが、希望を持てる事実を西谷さんは紹介している。いずれもユダヤ人側からの正義の決起である。
 ユダヤ人による暴力的な入植地拡張に反対して、同じユダヤ人がパレスチナ人を守る団結小屋を建てて闘っているのだ(三里塚闘争を彷彿とさせる)。他にも、「イスラエル&パレスチナ平和運動」の存在。経済産業大臣の自宅前にユダヤ人女性がひとりで座り込む闘い(グレタ・トゥーンベリのように)など。これを次号で紹介したい。(朽木野リン)