
介護サービスの中で「掃除」は、身体介護よりも簡単だと思われがちですが、「臭い」は特に尿臭や便臭が絡むと、かなり難易度が上がる。そもそも人間が、アンモニア臭に不快さを感じるのは、冷蔵庫がなかったはるか昔の時代から、食べ物が腐敗していないかを感じるためと言われている。
先日、私がサービスに入り始めた80代の認知症の男性は、身体機能は概ね良好なのだが、中度の認知症だった。一番の困難は、尿意を感じなくなっていること。私が初めて会った時にも、ご近所に住む妹さんと一緒にお話ししている最中に、座ったまま尿失禁されてしまった。便意はあるので、その点は幸いだったが…。
そんなわけで、市営住宅一戸に尿臭が蔓延、共有階段に面した扉の前に立つだけで尿臭を感じてしまう。こんな案件に、「週2回のサービスで状況を改善してほしい」という依頼である。
アンモニアにはクエン酸
じつは、依頼をしてきたケアマネジャーさんも、若くて、このような経験がないらしく、「こんな状況でも、なんとかできるものですか?」と不安顔だった。
今回の秘策は、クエン酸水によるアンモニアの分解だ。スプレーボトルに水道水と粉のクエン酸を入れて混ぜ、フロアー部分にたっぷり吹きつけ5分ほど放置する。ここでアンモニアがクエン酸と化学反応し、クエン酸アンモニウムという無臭の物質に変わる。そのあと、乾いたウェスで拭き取っていく。ただ、尿にはタンパク質や脂質も含まれており、その後、今度はマイペットで通常の拭き掃除をする。
1カ月で劇的に改善
絨毯やキッチンマットは、そのままクエン酸スプレーを上から吹きかけ、乾いたらまた吹きかけを何度も繰り返す。
結果として、サービス開始から1カ月で顕著な変化が現れ、尿臭は劇的に改善した。今では、ご本人はシャワーで全身を洗うところまで進めることができ、当初諦めていた妹さんは大喜びだった。
介護サービスは、優しさや腕力だけでは通用しないところがあり、場面に応じた最適解(経費も含む)を絶えず情報を集めアップデートする必要がある。(小柳太郎/神戸市、訪問介護ヘルパー)
